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何を基準にして給与を払うのか

何を基準にして給与を払うのか

2023/09/15

先日、定年再雇用後の給与について争われた最高裁判決がありました。

新聞でも報道されていましたので、ご存知の方も多いと思います。
この裁判で最高裁は、再雇用後の給与が定年時の約60%も引き下げるのを違法とした高裁の判決を破棄し、
再度審理をするよう同高裁に差し戻しました。

判決では、再雇用後の給与額が不合理であるかどうかの判断は、「性質や支給する目的を踏まえて検討す
べき」としています。

 

具体的には、基本給の決定は勤続年数なのか、能力なのか、あるいは従事する職務なのか、その特性を検
討してそのうえで不合理であるかどうかを判断すべきとしています。

多くの企業では、定年再雇用後の給与は概ね20~40%程度下がります。
大企業だと給与水準が高いため、50%程度下がるのは珍しくはありません。
このような世間情勢から、決して給与水準が高いとは言えない中小企業で、定年前と同じような仕事をし
ていながら60%も下がってしまうのは、不合理ではないかとも考えられます。

ところが最高裁は、低下率だけに着目するのではなくて、会社が何を基準にして給与を決めているかにつ
いて焦点を当てているのです。

 

給与は人事制度の一部でもあるため、日本の人事制度の特徴を整理したいと思います。

まず給与は、年齢や経験年数、前職の給与額などを総合的に勘案して決めています。
職務給のように「○○職は、○○万円」という決め方はしません。

職務範囲は、欧米諸国のように明確に限定していないません。
例えば、経理職として採用しても、来客があれば給茶をする、電話がかかってくれば電話にでる、会議があ
れば資料を準備するのは、入社時に説明しなくても日本人であれば暗黙の了解です。
人手が足らないときは、他の職務であっても応援するのが普通です。

次に雇用システムはというと、長期雇用を前提としています。
必要に応じて教育の機会を提供し、様々な職務を経験させて、将来の会社を担う人材を長期的に育成する仕
組みです。

 

若いころは働き具合よりも給与は少ないが、転勤等の業務命令に従って長く働けば、年齢が高くなるにつれ
て仕事のパフォーマンスよりも給与の方が高くなる長期決済システムなのです。
そのため、ところどことでは矛盾があっても、長期的にみればバランスはとれています。

ところが、昨今では人手不足を背景にして転職市場が拡大しており、短期雇用へとシフトしている傾向があ
ります。

 

その時点でのパフォーマンスと給与とのバランスが求められる短期決済に移行しています。
でも、人事制度はいまだ旧来のままで運用しているので、説明を求められたときに回答に窮してしまうので
す。

 

連日、賃上げが大合唱されています。
現政権の一丁目一番地の政策でもありますが、賃金の議論はなにも賃上げだけではありません。

上述の最高裁判決に倣い、何を基準にして賃金を決めるのか、その基準に照らして妥当な格差となっている
だろうか、あるいは諸手当は本来のあるべき目的で支給しているだろうかなど、原理原則に立ち返って自社
の賃金制度を検証することも必要ではないでしょうか。

 

 

 

 

社労士法人ジンザイでは、人事制度(賃金制度等処遇制度、等級制度、評価制度等など)の設計と導入・運
用のコンサルティングを行っています。

 

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