自転車保険への加入が義務化されました!(神奈川県)

自転車保険への加入が義務化されました!(神奈川県)

2020/02/03

1.自転車通勤のリスクとは?


 昨今のエコブーム、や健康志向により自転車通勤をする人が増えています。従業員にとっては交通渋滞や電車遅延を回避でき、会社も通勤費を削減できるなどのメリットもあります。
 しかし、事故が起きたときのリスクも高まっています。自転車は身近で便利な乗り物ですが、対歩行者事故の増加や加害者への高額賠償事例が社会問題になっています(下表)。

 
【高額な損害賠償命令の例】

事故の概要 賠償の命令額
小学生の少年が自転車で下り坂を走行中、対向から歩
いてきた60代の女性と正面衝突。後遺障害を負わせた。
約9,500万円
男子高校生の自転車が歩道から車道を斜めに横断し、
男性と衝突。後遺障害を負わせた。
約9,500万円
信号無視した男性の自転車が、横断歩道を歩行中の
女性と正面衝突。女性は意識不明の重体で数日後死亡。
約5,400万円
禁錮1年10ヶ月実刑収監

 
 警視庁の調査によると、交通事故の件数は減少傾向にあるものの、そのうち自転車関連事故の件数の割合は2016年より上昇傾向にあります。
 こうした状況を受け、神奈川県では2019年10月より条例が改正され、自転車利用者への自転車保険加入が義務化されました。横浜市交通安全協会では、自転車保険への加入を呼びかけています。ちなみに、東京都は今年4月から義務化されます。

http://www.yokohama-ankyo.or.jp/jitenshakai/index.html

 
 通勤途中の事故であれば労災が適用されます。ただし、労災は本人のケガや休業を補償するもので、事故の相手方の治療代や休業、慰謝料等は補償されません。被害者への保証責任は、基本的には事故を起こした従業員本人が負いますが、保険に加入せず従業員がその責任を果たせない場合は、使用者である会社がそれを負わなければならないこともあります。

 

2.自転車保険の内容


 会社としては、まず自転車通勤の許可基準を定める必要があります。また、携帯電話を見ながらの運転、傘さし運転等違反があれば許可を取り消すことも説明します。
 許可基準には適切な自転車保険への加入を条件とします。適切かどうかは[従業員本人の保障もあるか(労災と自賠責は同時に利用できないため)]、[補償額は十分か(2億円以上など)]、[示談交渉の有無]等を確認します。
 
 自転車保険といっても、自分のケガの保障までは義務化されてはいません。相手に損害を与えた場合の損害賠償に備えるだけです。保険金額については、いくら以上でなければならないなどの決まりはありません。
 自転車保険はコンビニエンスストアやインターネットでも簡単に加入できます。保険料は月額数百円程度です。原則1年更新のため、有効期限や更新もれもチェックします。

 

3.自転車保険の種類


 自転車保険として販売されているものの多くは、自分のケガに備える傷害保険と、他人にケガを負わせたり、他人の物を壊した場合の損害賠償としての個人賠償責任保険が付保された内容となっています。
 傷害保険については、自転車での事故に限らず交通事故によるけがや日常生活やスポーツ中のけがまで補償するなど、補償の範囲はさまざまで、補償範囲によって保険料が異なります。
 
 自動車保険に加入している人は、個人賠償責任保険を特約として付帯できますので、自転車保険の加入義務を果たしていることになります。同様に、火災保険も個人賠償責任保険を特約として付帯できるケースもあります。
 まずは、ご自身が加入している自動車保険などの保険証や約款に個人賠償責任保険が付帯されているかどうかを確認し、付帯されていないようであれば、すぐに加入手続きをする必要があります。

 

4.この機会に見直しませんか?


 昨年10月より消費税が10%となり、交通機関の料金も変更になりました。この機会に、自転車通勤希望者も含め全従業員の現在の通勤手段・ルート・距離を確認してみてはいかがでしょうか。
 何故かといいますと、中には、住所が変更になっていても届け出ずに高い交通費を受け取っている、自転車を利用しているがバス代が支給されている・・・、といったこともあります。
 
 また、こんなこともあります。
 本来、電車通勤のはずなのにバイクや自家用車で通勤をしている社員がいる。しかし、会社はそれを注意せず、黙認しているということもあります。この場合、事故が起こったら会社は使用者責任を問われ、被害者から損害賠償責任を負うおそれもあります。
 自転車は道路交通法では車両ですが、免許制度がないため交通ルールが守られず弊害が社会問題化しています。今回の条例改正を機に、交通手段の確認を行って無駄やリスクを減らし、従業員の安全も確保する機会にしませんか。

 
 社会保険労務士の仕事をしていると、今回のように法律改正への対策をアドバイスするだけでは顧客のニーズを満たせないと感じています。
 一歩先を考えて、周辺分野についても影響することはないだろうか、それを契機としてこれまで続いた悪しき慣習を見直すべきではないか、など広い視点に立って労務管理の提案に心がけています。