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日給制や月給制の場合、最低賃金はどのように確認すべきか?

日給制や月給制の場合、最低賃金はどのように確認すべきか?

2020/10/20

 会社が従業員に支払う賃金には最低額(最低賃金)が定められており、会社はその額以上を支払うことが義務付けられています。 
 この最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。
 このうち「地域別最低賃金」は、毎年10月に改定されることになっています。
 
 2020年は新型コロナウイルス感染症による中小企業への業績を考慮して、据え置きまたは小幅な引き上げとなりました。
 都道府県ごとの最低賃金額は、こちらで確認してください。
            https://www.mhlw.go.jp/厚生労働省/地域別最低賃金の全国一覧/       ※←こちらをクリック!
 
 パートタイマーのように基本給が時給制で他に手当が支給されていない場合、最低賃金額を上回っているかどうかは容易に確認できます。
 しかし、月給制や諸手当が付いている賃金では、そう簡単には確認できません。
 社会保険労務士の仕事をしていると、この時期はそのような問合せがときどき寄せられます。
 そこで、今回は最低賃金の計算方法を中心に解説します。
 
1.最低賃金が適用される労働者の範囲
 最低賃金は、社員やパート、契約社員などの雇用形態にかかわらずすべての労働者に適用されます。
 ただし、一般の労働者より著しく労働能力が劣るなどの場合は、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれがあるため、次の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として、個別に最低賃金の減額ができる特例が認められています。
 あくまでも許可が必要条件になります。
➀精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
➁試みの使用期間中の方
➂基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
➃軽易な業務に従事する方
➄断続的労働に従事する方
 
2.最低賃金の対象となる賃金
 最低賃金の対象となるのは、毎月支払われる基本的な賃金になります。
 具体的には、実際に支払われる賃金から次のような一時金や賞与、割増賃金(時間外手当、休日手当、深夜手当)、通勤手当などを除外したものが対象となります。
➀臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
➁1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
➂所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
➃所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
➄午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
➅精皆勤手当、通勤手当、家族手当
 
3.日給制と月給制の計算方法
 時給制のパートタイマーだけでなく、契約社員や正社員などに適用される日給者や月給者についても、1時間あたりの賃金額を算出して最低賃金を下回っていないか確認する必要があります。
 ここでは、2020年10月、神奈川県の最低賃金額(1,012円)を基準にして計算します。
 
(1)日給者の場合の計算方法
   日給÷1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額
   例1)日給:10,000円、 所定労働時間:1日8時間の場合
      10,000円÷8時間=1,250円
      ⇒1,012を上回っているためOKです。
   例2)日給:8,000円、職務手当:月額5,000円、所定労働時間:8時間、月の勤務日数:21日の場合
      (8,000円÷8時間)+(5,000円÷8時間÷21日)≒@1,029円
      ⇒月額で支払われる職務手当5,000円は、1時間当たりの単価に換算して計算します。1,012を上回っているためOKです。
 
(2)月給者の場合の計算方法
   対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金すべてが対象です。
   ただし、「2.最低賃金の対象となる賃金」の➀から➅に該当する賃金は、最低賃金の計算から除かれます。
   月給合計額÷月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額
   例 )基本給:170,000円、家族手当:10,000円、通勤手当:5,000円、資格手当:10,000円、所定労働時間:170時間の場合
      (170,000円+資格手当10,000円)÷170時間≒1,058円
      ⇒家族手当と通勤手当を除いて計算します。1,012を上回っているためOKです。
 
 最低賃金の確認は、時給制のパートタイマーだけを対象としてしまいがちですが、日給制や月給制の従業員についてもこの機会に見直してみてはいかがでしょうか。