新入社員の社会保険・給与計算の注意点
2020/04/14
2020/04/14
世界中が国難に直面しています。オリンピックをはじめとして、すべての行事が延期または中止になっています。
年度末、新年度特有の行事も同様です。学生は卒業式も入学式も授業も中止。企業では入社式や新入社員研修の延期や、あるいはリモートでの実施を余儀なくされています。そのせいか、例年と比べて駅や街中で新入社員らしき若者を見かける機会が極端に少なくなりました。今年は様変わりの新年度です。
そのような中、新卒者が入社してきますので、人事担当者はその手続きに追われています。社会保険労務士業務をしていると、新 入社員が入社してきたときの社会保険・給与計算に関する問合せが多く寄せられます。
そこで今回はその注意点についてまとめました。実務でよく間違えることがありますので、お役立て下さい。
1.20歳未満の新入社員の厚生年金保険加入
国民年金は20歳から60歳まで加入します。そのため、高校を卒業したばかりの18歳の新入社員は年金手帳(基礎年金番号)を持っていません。しかし、会社に勤めると厚生年金保険に加入します。厚生年金は20歳未満であっても要件を満たせば加入が義務づけられています。国民年金の加入年齢と混同して、厚生年金に加入しなくても良いのではないかと勘違いされることがよくあります。
20歳未満の方の社会保険加入手続きは、マイナンバーを記入しない場合、『健康保険・厚生年金被保険者資格取得届』の「基礎年基金番号」欄を空白のままで提出します。資格取得手続き終了後に、基礎年金番号が付された年金手帳が新規で交付され、会社に送られてきます。
2.新入社員の保険切り替えと税法上の扶養非該当
入社後は、会社の社会保険(健康保険と厚生年金)に加入し、今まで加入していた健康保険や国民年金は喪失(脱退)となります。入社前はご両親等に扶養されていますので、所得税法上の扶養者に該当していましたが、入社後は、独立して生計を立てることになりますので、扶養者に該当しなくなります。
入社の前後では、次のような違いがあります。重要なのは、ご両親等新入社員を扶養している人の手続きです。勤務先の社会保険・給与計算担当者に連絡して、健康保険の扶養削除の手続きをしてもらいます。
また税法上の扶養に非該当となりますので、給与計算の際は所得税の金額に影響してきます。
入社前 | 入社後 | 切替え手続き | |
健康保険制度 | ご両親どちらかの健康保険の
扶養に該当 |
入社した会社で健康保険に加入
する |
親の勤務先へ連絡し、勤務先
経由で健康保険の扶養削除の 手続きを行う |
年金制度 | 国民年金保険加入
※20歳未満は未加入 |
入社した会社で厚生年金保険に
加入する |
自動切替え |
所得税
扶養人数 |
ご両親どちらかの税法上の
扶養に該当 |
税法上の扶養に非該当となる | 親の勤務先へ連絡 |
3.新入社員以外の社会保険・給与計算の注意点
新入社員以外の従業員でも、4月は特に給与計算と社会保険の取扱いについてくつかの注意事項があります。
(1)所得税法上の扶養非該当
従業員のお子さんや配偶者が就職した旨の連絡があれば、所得税法上の扶養から外れることになりますので、所得税法上の扶養人数を減らして給与計算をします。
(2)家族手当の変更
家族手当を支給している会社では、何歳までが対象なのか支給基準を確認する必要があります。支給基準から外れる場合は、家族手当の金額を減額する必要があります。
本人から申し出がない場合、数ヵ月、あるいは数年も経ってから気付くこともあります。そのとき長期間遡って徴収するのは難しいので、給与計算担当はチェックリストを作成して漏れがないか確認する必要があります。