働き方改革関連法の要点整理 ~第1回 時間外労働の上限~
2018/11/01
2018/11/01
働き方改革関連法が施行される2019年4月まであと半年を切りました。改正法だけでは具体的にどのように変わるのか、どのように対応しなければならないのかわかりませんので、9月以降関連する政令や省令が順次公表されています。具体的な対応は政省令を参考にします。
今回から数回にわたり実務上の重要ポイントについて解説します。項目によっては就業規則の変更も伴います。
1.時間外労働の上限規制 (大企業:2019年4月~ / 中小企業:2020年4月~)
現在労働基準法では、労働時間の制限について「週40時間または1日8時間」と定めていますが、労使間で協定(36協定)を結び、所轄労働基準監督署に届け出れば「月45時間・年360時間」まで時間外労働ができます。さらに特別条項付きの協定を結べば、上限がなく無制限に時間外労働ができます。
今回の法改正では、特別条項付きの労使協定であっても、年間720時間(法定休日労働を除く)までに規制され、単月では100時間未満(法定休日労働含む)、2~6カ月の平均で月80時間(法定休日労働含む)以下に抑えなければなりません。また、月45時間を超えられるのはこれまで通り年6回までです。
残業や休日出勤が多い会社では、その月の労働時間数だけではなく、直近2~6ヵ月の平均残業時間と月間累計での時間外・休日労働時間数を毎月集計し、超過しないように管理する必要があります。人による管理ではかなりの時間を要しますので、勤怠管理システムの導入が必要不可欠になります。
注)2019年4月から5年間は、自動車の運転業務・建設業務・医師は規制の対象外となります。
2.36協定届の変更について (大企業・中小企業:2019年4月~)
時間外労働の上限規制の改正にともない、36協定の様式が変更になります。
□新様式は2種類に
36協定は今まで1種類でしたが、新様式では2種類になります。特別条項を付ける場合は2枚、付けない場合は1枚になります。
□労働保険番号と法人番号の記載
労働保険番号と法人番号を記入します。これにより36協定届出の有無、上限時間数等についてデータベース化が容易になります。ピンポイントでの調査を行うことが可能となります。
□1年の起算日欄の新設
1年間の上限時間を計算する際の起算日を記載することになります。
□チェックボックス欄の新設
時間外労働の上限時間を超過しないことを確認・厳守させるためのチェック欄が新設されました。
□限度時間を超えて労働させる場合の手続・措置 (※特別条項のみ)
「月45時間・年360時間」を超える労働をさせる場合の社内手続方法や「健康及び福祉を確保するための措置」として、医師による面接指導・勤務間インターバルの導入・時短対策会議の開催などの具体的な内容を記載する必要があります。
3.労働時間の適正把握義務 (大企業・中小企業:2019年4月~)
勤怠管理システムやタイムカードなどの客観的な方法により、労働時間の適正な管理が義務付けられます。現在、労働時間の管理が義務付けられていない管理監督者や裁量労働制の適用者についても、長時間労働の抑制を目的とした健康管理のために労働時間管理の対象となります。
また、医師による面接指導の義務が対象拡大され、月80時間超えの長時間労働者に対しても本人の申出があれば必ず受けさせる義務があります。