未払い残業代の消滅時効が、2年から3年に延長

未払い残業代の消滅時効が、2年から3年に延長

2020/02/04

2020年4月に民法が120年ぶりに大改正されます。契約に関する事項が中心のようです。民法改正に関連して、現在、労働分野では「賃金請求権」の消滅時効の延長が議論されています。「賃金請求権」とは、平たく言えば未払い賃金や未払い残業代の請求権の時効のことです。
 
この「賃金請求権」の時効について、2019年12月27日に開催された厚生労働省・労働政策審議会の資料を基にして現在の審議事項をまとめました。
現在、賃金請求権の消滅時効は、民法では使用人の給料に関する短期消滅時効は1年間となっていますが、民法の特別法である労働基準法において、労働者保護や取引安全等の観点から、消滅時効期間は2年間に延長されています。
 
2020年4月に改正施行される民法では、賃金の短期消滅時効(1年間)が廃止されるとともに、一般債権の消滅時効期間については、次のように改正されます。


➀債権者が権利を行使することができることを知った時から、5年間行使しないとき

          または
➁権利を行使することができる時から 10 年間行使しないとき

 
賃金債権は、どちらも「給与日(債権発生時)」になるのが通常のため、消滅時効は、給与日から5年間になります。これを受け、賃金請求権(未払い賃金・残業代)の消滅時効について、厚生労働省では、令和2年4月施行に向けて、現在開会されている通常国会(1月20日開幕)で、労基法の改正を行う方針です。
 
なお、労働基準監督署の指導により、未払い残業代の遡及払いを命じられた企業数や金額は、次のとおりです(平成30年度)。厚生労働省では、毎年公表しています。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/chingin-c_h30.html

 
1 論点
賃金請求権の消滅時効の起算点及び消滅時効期間については、労働者保護を目的とする労基法において各種の保護規制が設けられています。現行の2年の時効についても、民法の1年では労働者保護に欠ける等の観点から定められており、今回の見直しで検討する必要がある、とされています。
 
一方、労基法上の消滅時効は、紛争の早期解決や将来的の紛争防止という点や、今後大量に未払い賃金・未払い残業代請求のおそれがあることを踏まえ、民法とは異なる取扱いをすることも考えられています。
 
しかしながら、退職後に未払賃金を請求する労働者の権利保護の必要性等も総合的に勘案した結果、「5年とする」こととしています。ただし、直ちに5年という長期間の消滅時効期間を定めることは、労使の権利関係を不安定化や紛争の早期解決・未然防止という役割への影響等も踏まえて慎重に検討する必要があるため、当分の間、「3年間とする」こととしています。
なお、退職金請求の消滅時効期間については、現行の5年を継続することとしています。
 
上記のように、2019年12月27日に行われた労働政策審議会では、「賃金請求権の消滅時効は原則5年、ただし、当分の間は3年とする」ことになりました。

 

2 賃金以外の時効について

労基法で定められている賃金以外の次の請求権は、「現行の2年間を継続する」としています。
(1)年次有給休暇の請求権
(2)災害補償の請求権
(3)その他の請求権(帰郷旅費、退職時の証明、金品の返還(賃金を除く。))

 

3 記録の保存について

労働者名簿や賃金台帳等の記録の保存義務については、「賃金請求権の消滅時効に合わせて原則は5年としつつ、当分の間は3年とする」としています。

 

4 付加金について

付加金については、その請求期間については、「賃金請求権の消滅時効期間に合わせて原則は5年としつつ、当分の間は3年とする」としています。賃金請求権の時効が、4月から2年が3年に、5年後は5年に延長となる可能性が高いことから、未払い残業代請求をビジネスとして扱う業者などがたくさん出現してくるのが想像できます。
 
マスコミも大々的に取り扱うと思われますので、企業としては早期に対策を講じて、できるだけ負担が少なくなるようにしなければなりません。
 
企業の成長・繁栄を人事面からサポートする社会保険労務士ジンザイとしては、横浜市内の中小企業様を中心に、適正かつ効率的な労働時間管理や給与計算のアドバイスを通じて、未払い残業問題の早期解決に向けて努めていきたいと思っています。