採用のとき、身元保証人は必要か?

採用のとき、身元保証人は必要か?

2021/02/02

身元保証人とは?

 「身元保証人」というと、どのような印象を持ちますか?
借金の連帯保証人や、人を疑うようでどうかと思うなど、良くないイメージを抱くのではないでしょうか。

 「身元保証人」を額面通りに解釈すると、「本人の素性は間違いないのを保証する人」ということになります。
 しかし、入社のとき人事部がそのような意味で身元保証人を取り付けることはありません。
 法律的には、保証した従業員の行為によって会社が損害を被った場合に賠償責任を負いますので、現実的にはそれを担保するためです。

 

就業規則と身元保証書

 就業規則の作成(改訂)業務をしていると、身元保証についてよく相談を受けます。
入社のときの提出書類の一つと言えばそれまでですが、従業員によっては重いものです。
両親が他界したり、一人っ子であったり、親戚付き合いが希薄だと、保証人をお願いできる人がいないケースもあります。
 そのような場合は、他人にお願いせざるを得ません。

 この「身元保証人(身元保証書)」について、入社時の提出書類として従業員から提出を求める会社と求めない会社があります。  
この違いは、経営者または人事担当責任者のこれまでの職業経験が影響しています。
 つまり、ご自身が就職のとき身元保証を求められられた経験のある人や、従業員の過失によって会社が損害を受けた経験のある人は、
必ず提出を求めます。
 
 私はこれまで2つの会社で働いたことがあります。2社とも金融機関なので身元保証書の提出は必須でした。
そのうちの1社からは保証人を2名求められました。直筆の保証人の提出後、保証人についての調査も行われました。

 自分の経験を踏まえて、金銭や秘密情報を直接取り扱う職業に就く場合に、身元保証書を取る必要があると考えています。
当社では、社員採用の際は身元保証人1名を提出してもらっています。
 理由は、社会保険労務士業務ではクライアント先従業員・役員の個人情報と企業情報をたくさん取り扱っているからです。

 前者では、個人情報保護法でいうところの、本人及び扶養家族の住所・氏名・生年月日・性別の基本4情報、それ以外に病歴や収入などの
センシティブな情報も扱います。
 後者の情報では、役員構成や取引先の情報、トラブル情報、受託業務によっては財務情報も扱います。

 

民法改正では

 身元保証については「身元保証に関する法律」というものがあり、保証の効力や期間などが規定されています。
実際にどの程度責任を負うべきかの裁判例もいくつかあります。
 よく誤解されるのですが、借金の連帯保証人のように重い責任を追わされるということありません。
一定程度は保護されています。

 2020年4月に120年ぶりに民法が大改正されました。
 民法改正の一つに、身元保証人に関する項目があります。
 改正法では身元保証人が負うべき損害賠償金の「上限額」を身元保証書等に明記しない限り、会社は保証人に対して損害賠償請求が
できなくなりました。
 人手不足の折、保証の「上限額」が記載された身元保証書を提出してもらうのは、容易ではありません。
「上限額」の記載のない身元保証書は法律的な価値は消滅しますので、「本人の素性は間違いないのを保証する人」だけの書類となります。
 
 このような改正がなされたため、クライアント企業に法改正の説明を兼ねて「これからも身元保証書はとりますか?」と伺うと、この際だから
辞めるという会社もあれば、続けるという会社もあります。
 どちらがいいというのではありません。これは会社のスタンスです。
 本来の労務管理というのは、このようなことについて会社の考え方を整理し、ルール化することではないかと思います。
 
 法律的な効果が薄れても、誓約書と同じように〝心の抑止力〞としての効果は残るものと思います。
 毎年のように従業員による金銭横領の相談を受けますが、身元保証書を取り付けていれば、そのような行為を防げたかもしれません。
 何らかの歯止めがあれば、不正行為防止にもつながります。
 読者の皆さんは、どう思いますか?