世間では有給休暇を何日くらい取得しているのか?
2020/03/27
2020/03/27
取得の義務
昨年4月に働き方改革関連法が施行され、10日以上年次有給休暇が付与される従業員(管理職・パートを含む)に対して、5日以上の取得が義務付けられました。これに違反すると1人につき30万円以下の罰金が会社に科されることになっています。
有給休暇の起算日が4月の会社だと、あと数日に迫っていますので、対象者全員が5日以上取得できているかの確認が必要な時期になります。
この法改正により、これまで有給休暇について関心がなかった人からも「パートやアルバイトにも有休はあるの?」という質問がたくさん寄せられました。
驚くことに、建設業や運送業などの業界では従来から有休という概念そのものがあまりないのにもかかわらず、そのような業界からの問合せも増えています。就業規則改定の相談もありました。
人手不足・採用難の折、多くの中小企業にとっては、有休を取得するとますます仕事が回らなくなってしまうのが現実です。しかし取得させないで退職してしまっては元も子もない、という板挟みの状況ではないでしょうか。中小企業経営者の苦悩が伝わります。
世間では一体…!?
さて、社会保険労務士の仕事をしていると、「世間では一体どのくらい有休を取得しているの?」と聞かれることがあります。特に横浜市内や川崎市内の建設業、運送業、製造業の中小企業経営者からのご相談が多いのを感じます。100%取得が望ましいのですが、企業規模や業種などを考慮して、現実と向き合いながら回答するように心掛けています。
昨年10月、厚生労働省より平成31年度の有休取得率が公表されています。本調査結果から世間相場をみていきます。なお、平成31年1月現在の調査のため、昨年4月から義務化された5日の取得義務の結果は反映されていません。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/19/index.html
データでわかる取得率
まず、全平均を見てみます。平均付与日数18.0日のうち平均取得日数は9.4日で、平均取得率は52.4%でした。昨年度より1.3%上昇しています。それでも付与日数のうち半分強取得しているのが実情です。過去20年ぐらい概ね50%前後で推移しています。
男女別の取得率では、男性49.1%、女性58.0%です。なんとなく理解できます。
従業員数別では、1,000人以上の大企業で58.6%、従業員数が少なくなるにつれて取得率は低下し、30~99人の企業では47.2%です。よく理解できます。
4月以降、大企業の管理職の評価項目には部下の有休取得状況が加わった、という話を耳にします。今後大企業ではより取得率が高まるものと思われます。
日本の多数を占める30人未満企業は調査対象とされていないため取得率はわかりません。有休管理が不十分だから取得率の計算が困難なため対象外となっているのかもしれません。おそらく30%台から40%前半ではないかと推測できます。
性別・企業規模・年 | 平均付与日数(日) | 平均取得日数(日) | 平均取得率(%) |
平成31年調査計 | 18.0 | 9.4 | 52.4 |
男 | 18.4 | 9.0 | 49.1 |
女 | 17.1 | 9.9 | 58.0 |
従業員数1,000人以上 | 18.6 | 10.9 | 58.6 |
300~999人 | 18.0 | 9.0 | 49.8 |
100~299人 | 17.7 | 8.7 | 49.4 |
30~99人 | 17.3 | 8.2 | 47.2 |
業種別の取得率
業種別の調査は今回行われていませんので、前年度のデータで見ていきます。
業種によるばらつきがあることがわかります。代表的な業種では最も高いのが製造業で58.4%、最も低いのが宿泊業・飲食サービス業の32.5%です。卸売業・小売業35.8%、生活関連サービス業・娯楽業36.5%、建設業38.5%が30%台となっています。
業種 | 平均付与日数(日) | 平均取得日数(日) | 平均取得率(%) |
建設業 | 18.2 | 7.2 | 38.5 |
製造業 | 18.8 | 11.0 | 58.4 |
運輸業、郵便業 | 18.1 | 9.3 | 51.4 |
卸売業、小売業 | 18.2 | 6.5 | 35.8 |
不動産業,物品賃貸業 | 17.2 | 8.6 | 49.9 |
宿泊業,飲食サービス業 | 16.1 | 5.2 | 32.5 |
生活関連サービス業,娯楽業 | 18.3 | 6.7 | 36.5 |
何かと話題の多い有給休暇。世間相場と比べて皆様の会社の取得率はどうですか?
もし10日を取得できていない従業員がいるのなら、新型コロナウイルス感染防止対策として、業務に支障がない範囲内で、有給休暇の取得を促すのもよいかと思います。
半日または時間単位の導入、計画的付与、管理方法など有給休暇について疑問点などがありましたら、労務管理の専門家でもある社会保険労務士法人ジンザイ(横浜駅きた東口徒歩5分)に気楽にお問合せください。
TEL:045-440-4777