経営者が加入できる労災保険
2020/03/11
2020/03/11
労災保険の目的
労災保険は、正式名称を「労働者災害補償保険」といい、業務上又は通勤途中による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して保護をするため、必要な保険給付を行います。
あわせて、業務上又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進や遺族の援護などを行うことを目的としています。
労災保険は、あくまでも「労働者」が対象になりますので、経営者は加入することができません。しかし、経営者であっても、業務の実情や災害の発生状況などからみて労働者に準ずると認められる中小事業主や一人親方は、国が運営する労災保険に特別に加入することができます。この制度を「特別加入労災」といいます。
近年では特に建設業経営者の加入者が多く、現場入場時に社会保険と共に特別加入労災にも加入しているかの証明などを求められるケースが増えています。
加入対象者
特別加入労災に加入できる対象者は、次の4種類です。
1.中小事業主(労働者を使用する事業主)
2.一人親方等(労働者を使用せずに、一人で建設業などの事業を行う人)
3.特定作業従事者(特定農作業従事者など)
4.海外派遣(日本国内の事業主から、海外で行われる事業に労働者として派遣される人など)
本記事では、上記の対象者のうち中小事業主と一人親方等について、記述します。なお、中小事業主は、次の業種ごとの常用従業員数の要件を満たす必要があります。
○金融業・保険業・不動産業・小売業 ・・・50人以下
○卸売業・サービス業 ・・・100人以下
○上記以外の業種 ・・・300人以下
保険料について
年間保険料は、「給付基礎日額」に加入期間と保険料率を乗じて算出します。
「給付基礎日額」とは、仕事中のケガにより休業を余儀なくされた場合に、労災保険から支給される1日当たりの休業補償の金額で5,000円から25,000円の範囲内で自由に選択できます。休業補償の金額が高くなれば、その分保険料も高くなります。
年間保険料 =給付基礎日額 × 加入期間 × 保険料率
年度(4月から翌年3月)の最初から加入する場合は、1年間になります。途中で加入する場合は月割で計算します。保険料率について、中小事業主の場合は、同じ建設業であっても塗装業や舗装工事などの事業の種類によって異なります。
一方、一人親方の保険料率は、職種に関係なく同一です。では、具体的に保険料を算出します。
例1) 中小事業主のAさんの場合
業種は既設建築物設備工事業(建設業)で保険料率は12/1000、給付基礎日額は10,000円とします
⇒ 10,000円×365日×12/1000=43,800円(年間保険料)
例2)一人親方等のBさんの場合
業種に関係なく保険料率は18/1000で、給付基礎日額は5,000円としています
⇒ 5,000円×365日×18/1000=32,850円(年間保険料)
給付の種類
労災に該当する場合は、労働者と同じように療養給付(治療代が原則無料)、休業補償、障害給付、傷病年金、葬祭料などの保険給付が適用されます。
加入手続き
特別加入労災の手続きは、労働保険事務組合を通じて行います。「労働保険事務組合」とは、厚生労働大臣から労働保険事務処理を行うことを認可された団体組織です。
事業主が労働保険事務組合に労災保険に関する事務処理委託を取り交わすことにより、労働保険の新規加入や労働保険料の確定申告に関する手続きなどの業務も行っています。
社会保険労務士法人ジンザイでは、労働保険事務組合を併設していないため、中小事業主や一人親方の特別加入労災の手続きに際しては、「神奈川SR経営労務センター」という社会保険労務士を会員とする労働保険事務組合に加入し、代行して手続きを行っています。
神奈川SR経営労務センターホームページ
https://www.kanagawa-src.gr.jp/
横浜市や川崎市を中心とした神奈川県内で事業を営む中小事業主や一人親方の方が、特別加入労災を希望される場合には、加入時に健康診断の実施が必要な業種もありますので、詳しくは社会保険労務士法人ジンザイ(横浜駅きた東口徒歩5分)にお問合せください。
加入手続きだけではなく、労災事故の給付、その他給与体系や労務管理、就業規則作成についても親切丁寧にご説明いたします。
☎ 045-440-4777