よくあるご質問コーナー
- 新型コロナウイルス感染症拡大の防止策として、当社でも営業自粛を行いました。その影響で売上高が大幅に落ち込んでいます。営業を再開してもしばらくは売上の回復が見込めそうにないため、リストラを考えています。
人件費削減の方法や最終的に解雇を実施する場合に注意すべきことはありますか? - 人件費の削減や解雇を実施する場合は、法律上、様々な制約があります。特に解雇は、会社の一方的な理由だけで行うことはできませんので、慎重な対応が求められます。
人件費の削減には次のような方法があります。貴社で実施できる方法を選択することになりますが、一般的には、下に行くほど法的リスクが高くなりますので、慎重に対応する必要があります。
○新規採用の停止、時間外労働の削減
○派遣契約の解除
○役員報酬削減
○昇給の停止、賞与の減額・不支給
○パートタイマーや契約社員の雇止め
○希望退職者の募集
○従業員の賃金引下げ
○退職勧奨
○整理解雇
様々な手段を講じてもさらに人件費を削減せざるを得ない場合、最終手段として従業員の解雇があります。「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利濫用として、無効」(労働契約法第16条)になりますので、自由にできるわけではありません。
次のように解雇にはいくつかの種類があります。それによって求められる要件(要素)が異なります。
●普通解雇
懲戒解雇以外の解雇で、次のような事例が該当します。
・協調性に欠け、業務の効率が悪い
・勤務成績が悪く、何度も指導や教育しても改善の見込みがみられない 等
●懲戒解雇
窃盗、横領、重大な経歴詐称等従業員に非があり、極めて悪質な規律違反等を行った場合の解雇。
「労働者の責に帰すべき事由のある解雇」として労働基準監督署長の認定が受けられた場合は、解雇予告または解雇予告手当の支払は不要になります。
●整理解雇
経営難に陥り、人件費削減のため最終手段として人員の削減を行うための解雇
ご質問の解雇は、いわゆる「整理解雇」に該当します。整理解雇は過去の裁判例で次の4つの要素(要件)を満たす必要があるとされていますので、できるだけ各要素(要件)を充足するよう努める必要があります。
○経営が立ち行かなくなるなど客観的な理由が本当にあるか?
○役員報酬削減や昇給停止など、できるだけ解雇をしないよう努めていたか?
○解雇の対象者は、好き嫌いや年齢・性別などで区別せずに、合理的に人選しているか?
○会社は従業員代表者(または労働組合)とよく協議をしたか?
なお、解雇の際は、次の解雇予告または解雇予告手当の支払いが義務づけられています。(労働基準法第20条)
○30日以上前に解雇予告をすること
または
○30日分以上の平均賃金を支払う(解雇予告手当)こと
- 6ヵ月後に出産する予定の社員がいます。出産後は1年程度育児休業を取得して、その後復職する予定です。出産から育児休業まで様々な社会保険給付があると聞きました。その内容を時系列で教えてください。
- 妊娠、出産、育児休業の期間は、少子化対策として健康保険と雇用保険から各種の社会保険給付等の有利な制度があります。各段階で手続きが必要とされますので、忘れずに時系列で覚えておく必要があります。
各種社会保険給付等の制度について、時系列で解説します。
①出産手当金(産前・産後休暇)
出産予定日を基準に6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に本人が請求した場合は、就業させることはできません。
出産後8週間を経過しない場合も就業させることができませんが、産後6週間を経過して本人から請求があり、医師が認めた業務に就かせることはできます。
産前及び産後休暇中は給与額(直近1年間の標準報酬月額の平均)の概ね67%の出産手当金が支給されます。
②出産育児一時金
健康保険から出産費用に要する42万円が支給されます。
③社会保険料免除
申請により、産前休暇から育児休業(最長、子が3歳)までの間、社会保険料(健康保険・厚生年金)が本人及び会社とも免除されます。
④育児休業給付金
産後8週間の休業が終了し、子が1歳に到達するまで育児休業が取得できます。保育園に入れないなどの理由があれば、最長2歳まで延長することもできます。また、育児休業期間中は、雇用保険から最初の6ヵ月(180日間)は給与額の概ね67%が、7ヵ月目(181日)以降は概ね50%の給付金が本人に支給されます。
⑤標準報酬月額改定
育児休業が終了して職場復帰した際に、時間短縮や所定外労働を行わないことで、給与が休業前より低下する場合に、育児休業終了時の標準報酬月額が随時改定に該当しなくても、標準報酬月額の改定を申し出ることができます。
⑥養育期間標準報酬特例
3歳未満の子を養育する被保険者等の標準報酬月額が、子を養育することになった日の前月(その月が被保険者でない場合は、その月前1年間以内の被保険者であった月のうち直近の月)の標準報酬月額を下回る場合は、年金額の計算に際して、その期間は実際の標準報酬月額ではなく、従前の標準報酬月額とみなされます。
- 当社は現在、60歳定年で65歳まで働ける再雇用制度を導入しています。若い人材の採用が長らく苦戦を強いられているため、定年を引き上げてベテラン社員にもう少し活躍してもらいたいと考えています。
そこで、定年を引き上げるうえでの注意点や処遇制度設計のポイントについて教えてください。 - 高年齢雇用安定法が改正され、企業には令和3年4月から70歳までの就業機会の確保措置が努力義務として課されました。
法律の改正を待つまでもなく、超少子高齢化の折、特に中小企業においては高年齢者の雇用改革は待ったなしの状況です。
そこで定年や継続雇用年齢の引き上げなどが考えられますが、制度変更には様々な要因が関係しますので、総合的に考えて制度設計を行う必要があります。 - これまでの定年年齢から延長された年齢までの賃金カーブをどのように描くべきか?
特に、再雇用期間を定年延長に変更した場合、賃金カーブの変化は妥当であるか? - 総額人件費を抑制または原資確保の観点から、40歳以降の賃金カーブを見直すべきか?
逆に、新卒者から約40歳までの若手の賃金カーブは上げる必要はないか?
高年齢者雇用制度の改革には、いくつかのポイントがあります。
各社によって状況は異なりますが、それぞれのポイントを押さえたうえで、総合的にどのような制度を構築すべきかを検討する必要があります。
制度設計に当たり、主なポイントをまとめましたので参考にしてください。
1.高年齢者雇用安定法の改正への対応高年齢者雇用安定法では、①定年年齢を定める場合は60歳以上、②定年年齢が65歳満の場合は65歳まで次のいずれかの雇用確保措置を講ずる必要があります。
・65歳までの定年引上げ
・65歳までの継続雇用制度(再雇用制度、勤務延長制度)の導入
・定年の廃止
令和3年4月1日改正では、70歳までの就業機会の確保を目的として、次の措置のいずれかを講じることが努力義務として課されています。
・70歳までの定年引上げ
・70歳までの継続雇用制度(再雇用制度、勤務延長制度)の導入
・定年の廃止
・70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
・70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
(1)在職老齢年金制度の改正
令和4年4月より、60歳以上65歳未満の者について、支給停止となる在職老齢年金の基準額が65歳以上と同じく47万円に引き上げられました。 これにより年金が支給停止される可能性や減額幅が低下しますので、これまで以上に長時間働ける高年齢者が増えます。
(2)確定拠出年金の改正
令和4年5月より、企業型確定拠出年金に加入できる上限年齢が65歳から70歳に延長されました。長期雇用による老後の資産形成が充実するようになりました。
(3)雇用保険法の改正
令和7年4月以降は、高年齢者雇用継続給付金の支給率がこれまでの最大15%から10%に減額されます。給付金のメリットが減少します。
3.定年引上げ、継続雇用制度の検討通常は、定年引上げ(定年延長)または継続雇用制度(再雇用制度)の年齢引き上げが現実的な選択となります。いずれか一方、または組合せの制度設計が考えられます。
(1)定年年齢のみを引き上げる(定年延長)
(2)再雇用制度の年齢のみを引き上げる
(3)(1)と(2)のハイブリッド型で定年延長後に再雇用制度を導入する
定年延長と再雇用制度では雇用年齢が上がる点では一緒ですが、人事戦略によって大きな違いがあります。
定年延長は高年齢者の積極な活用を考えている会社に、再雇用制度は消極的な会社に適していると考えられます。
(1)定年延長と賃金制度
とりわけ、職能資格制度など年功的な賃金制度で長年運用して会社では、抜本的な改革が必要不可欠となりえます。
(2)再雇用制度と賃金制度
再雇用制度では、再雇用後の賃金額をどの程度減額するかがポイントになります。
ただし、「同一労働同一賃金」との兼ね合いもありますので、減額率は裁判例などを参考に検討します。
多くの会社では昇給制度がありませんので、より再雇用期間が長くなるとよりモチベーションダウンを引き起こす要因となります。昇給制度の導入が必要となり、併せて評価制度の構築も検討します。
定年または再雇用制度の年齢引き上げにより、新陳代謝の阻害要因となるおそれがありますので、役職定年制または役職任期制の導入を検討する必要があります。
逆に既に導入している会社では、役職定年後または役職任期終了後の雇用期間が長くなりますので、モチベーションアップのために、制度の見直し(又は廃止)を検討する必要があります。
- 働き方改革の流れを受け、当社でも残業時間を減らすように業務の見直しを行っています。大企業では月60時間を超えて時間外労働を行うと、割増賃金率が50%以上だと聞きました。中小企業も引き上げられるそうですが、そうなると割増賃金の支払いが大変です。残業時間を合法的に減らす方法はありますか?
- 大企業では月60時間を超えた時間外労動の割増率は50%以上となっていますが、令和5年(2023年)4月以降は中小企業も50%以上に引き上げられます。
- 当社でも外国人の方を採用しようと思っています。初めてのことなので、何をどうしたらいいのかわかりません。どんなことに気をつければいいのでしょうか?
- 外国人の方固有の書類や手続きがあります。ひとつずつ確認して、外国人労働者の方にも安心して働いてもらえるように準備しましょう。
- ・学歴要件(大学卒業相当)を満たしているか?
- ・学歴がない場合、実務経験要件(職種による)を満たしているか?
- ・留学生時代のアルバイトは、資格外活動の範囲内か(アルバイトの時間は、週に28時間以内であったか)
- ・転職者の場合、現時点で納付すべき納税義務を果たしているか?
- ・転職者の場合、前社の退職に関する届出を入国管理局に提出しているか?
- ・報酬要件(日本人と同等以上)を満たしているか?
- ・職務内容が現業労働や単純労働ではないか?(特定技能ビザ[※1]を除く)
- ・安定的、継続的な仕事であるか?(業務量が十分に確保されているか)
- ・雇用条件は適正か?
- ・本当にその職務を行うのか?当局から指摘されたときに十分に立証できるか?
- 密入国した人や在留期限の切れた人が働く
- 退去強制されることが既に決まっている人が働く
- 観光等短期滞在目的で入国した人が働く
- 留学生や難民認定申請中の人が許可を受けずに働く
- 外国料理のコックや語学学校の先生として働くことを認められた人が、工場や事業所で単純労働者として働く
- 留学生が許可された時間数を超えて働く
- 不法就労させたり、不法就労をあっせんした人は、「不法就労助長罪」
- →3年以下の懲役・300万円以下の罰金(外国人を雇用しようとする際に、 当該外国人が不法就労であることを知らなかったとしても、在留カードを確認 していない等の過失がある場合には、処罰を免れません)
- 不法就労させたり、不法就労をあっせんした外国人事業主
- →退去強制の対象
- ハローワークの届出をしなかったり、虚偽の届出をした人
- →30万円以下の罰金
まず、時間外の割増賃金は、週40時間または1日8時間を超えた場合に支払わなければなりません。そのため、所定労働時間を超えて働いても、週40時間または1日8時間以内であれば、通常の時間単価の支払で足りますので、割増賃金を支払う必要はありません。具体的には、所定労働時間が7.5時間であれば、8時間までの0.5時間分は通常の時間単価の支払いで済み、8時間を超えた場合に25%以上の割増の支払いが必要になります。
また、時期によって繁閑の差があるときは、変形労働時間制の活用により、時間外手当の支払いが軽減できます。
(例)
・1ヵ月のうち月末月初が忙しく、月の半ばは手が空く場合
・1年間のうち、春(3.4.5月)が忙しく、冬は比較的時間が空く場合
(変形労働時間制とは?)
一定期間を平均して、週40時間以内になるようにし、勤務時間や休日を業務に合わせて柔軟に設定することが可能な労働時間制です。
事例 | 1ヵ月のうち、月末月初が忙しく、月の半ばは手が空くような場合に有効です。
【1ヵ月単位の変形労働時間制】
1ヵ月単位の変形労働時間制は、1ヵ月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場(※1)は44時間)以内となるように、労働日と労働日毎の労働時間を設定することで、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間を超えたりすることが可能になる制度です。
たとえば、月末月初は9時間労働、月の半ばは7時間労働とし、1ヵ月を平均して週40時間以内であれば、9時間労働しても割増賃金の支払いは必要ありません。
(※1)常時使用する労働者数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業
●対象期間が1ヵ月の場合の労働時間の上限
(単位:時間)
月の歴日数 | 28日 | 29日 | 30日 | 31日 |
---|---|---|---|---|
上限時間数 | 160.0 | 165.7 | 171.4 | 177.1 |
事例 | 1年間のうち、春(3.4.5月)が忙しく、秋(9.10.11月)は比較的時間が空くような場合に有効です。
【1年単位の変形労働時間制】
1年単位の変形労働時間制は、1ヵ月を超え1年以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間以内となるように、労働日と労働日毎の労働時間を設定することで、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間を超えたりすることが可能になる制度です。
たとえば、繁忙期の春(3.4.5月)は1日9時間労働、閑散期の秋(9.10.11月)は7時間労働とし、1年を平均して週40時間以内であれば、繁忙期は9時間働いても割増賃金の支払いは必要ありません。
2019年4月より、在留資格に新しく「特定技能」が加わりました。人口減少と人手不足を背景に、今後、外国人労働者が急増することが予想されます。
外国人雇用についての知識・情報が必要になります。
1. 在留資格とは?
採用(内定)が決まったら、外国人の在留資格の確認を行います。在留資格がない外国人を雇用した場合は「不法就労」となり、働いた外国人本人だけでなく、会社にも罰則が課せられますので必ず確認しましょう。
①在留資格
入管法により、外国人に許可される在留資格や、在留中の身分・地位を明示するものです。外国人が日本に在留するためには、原則、在留資格が必要です。
②代表的な在留資格
在留資格 | 該当例 |
---|---|
技術・人文知識・国際業務 | 通常、大学卒業者が働く際の就労ビザ |
企業内転勤 | 海外の親会社、子会社等からの転勤の場合 |
技能実習 | 海外から実習生を受け入れる場合 |
技能 | 外国料理の調理やスポーツインストラクター 等 |
教育 | 小中高等学校の語学教師 等 |
特定技能 | 2019年4月から始まった在留資格 |
2. 正式採用前に確認すべき事項(在留資格申請の観点から)
①本人側の確認事項
etc.
②会社側の確認事項(仕事内容、給与等に関する事項)
etc.
※1:特定技能ビザとは、2019年4月から始まった在留資格
3.不法就労と知らずに働かせるとどうなるか?
不法就労とは?
不法就労となるのは、次の3つの場合です。
A.不法滞在者や非退去強制者が働くケース
(例)
B.入国管理局から働く許可を受けていないのに働くケース
(例)
C.入国管理局から認められた範囲を超えて働くケース
(例)
事業主も処罰の対象に…
※外国人を雇用する際には、在留カードを確認してください!
※「就労資格証明書」により、就労できるかどうか確認を行うことも可能です!
※入国管理局のHPで、在留カードが失効していないか、確認できます!
「法務省 入国管理局 在留カード等番号失効情報照会」
→ https://lapse-immi.moj.go.jp/ZEC/appl/e0/ZEC2/pages/FZECST011.aspx